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嚥下について

(この記事は2017年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


坂本Dr


  内科 医長
  坂本 京子




~嚥下とは~
 食べるときや飲むときに、口に入れて飲み込むまでの行為を嚥下といいます。嚥下には
①食べ物を認識して(脳で認知すること)
②口に入れてかみ砕き(口や舌の働き)
③ごっくんと飲み込んで消化管に送り込む(舌と咽頭喉頭の筋肉、骨の働き)
までの一連の動きがあり、どこが障害されても嚥下できなくなります。


◆嚥下障害を疑う症状
・食事中にむせる、肺炎を繰り返す
嚥下障害

※認知症があると嚥下障害が発見しづらく、極度の低栄養や重度の誤嚥性肺炎を起こしてから受診されることが多いです。(誤嚥性肺炎=食事や唾液が気管から肺に入って起こる肺炎)


◆単なる加齢で嚥下障害を起こさないためにすべきこと 
栄養バランスの良い食事をよく噛んで食べる
歯が悪ければ治療する、きちんと歯磨きをする
規則正しい生活をする
適度な運動をする(散歩やラジオ体操でも良い)
日中は昼寝以外横にならない
会話を楽しむ、カラオケで歌うなど声を出す
 嚥下するには上半身の筋力が必要です。噛まずに食べられるやわらかいものばかり食べていると嚥下する力が弱ってきます。歯が悪いと、きちんと噛めずどんどん嚥下力が弱るので入れ歯を合わせることも必要です。
 日中から常に横になっていると筋力低下や骨量の減少が起こるため嚥下障害が出やすくなります。
 声を出すことで嚥下するための筋肉が鍛えられます。


◆嚥下ができなくなる原因 
脳血管障害
神経疾患(パーキンソン病など)
認知症(アルツハイマー病やレビー小体型認知症など)
甲状腺機能低下症、心不全、肺気腫など
単なる加齢
 脳血管障害や病気で嚥下障害が起こる以外に加齢でも起こります。


嚥下内視鏡と観察画面◆嚥下に関する検査 
 嚥下内視鏡検査は、鼻から耳鼻咽喉科用の細い内視鏡を入れてipad の画像でのどを観察しながら食材を嚥下していただきどのように咽喉頭が動いているか、嚥下ができそうかどうかを調べます。


VFチェア 嚥下造影はバリウムを混ぜたプリンやとろみ水、粥などを食べていただき、レントゲン透視で撮影しながらどのような姿勢や方法で食べると安全かを調べます。リクライニングが必要な場合はVFチェアという嚥下造影専用の椅子に座っていただき、どのような姿勢が最適かを細かく調整しながら撮影して今後の対策を考えます。




 当院では主に入院患者さんに嚥下内視鏡検査と嚥下造影検査を行っています。




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当院での虫垂炎治療

(この記事は2017年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


平島Dr外科 医長 平島 相治



虫垂
 虫垂炎という病気については御存知の方も多いのではないでしょうか? 誤って「盲腸」と呼ばれることもありますが、盲腸とは虫垂に連続する大腸の一部の名称ですので、正確には病気を指すものではありません。この虫垂炎について、皆様はどのようなイメージをお持ちでしょうか? データにもよりますが、約10%の人が一度はかかる病気と言われ、おなじみの病気です。
 ひと昔前に虫垂炎で手術を受けた方なら、右下腹部に傷があるでしょうし、手術をしないで抗生物質だけで治療した方なら、「散らしたことがある」なんて答えられるでしょう。従来は虫垂炎と言えば、夜間であろうと休日であろうと、即時の手術で原因となる虫垂を切除していました。その理由として、抗生物質による治療が奏功しない場合には腹膜炎に移行する危険性や、抗生物質が奏功しても虫垂が残る以上は虫垂炎が再発する可能性があるからです。しかし最近は当院でも「まずは」抗生物質による治療をおすすめする機会が多くなりました。その理由としては以下の3 つがあげられます。
(1)抗生物質の進歩で大半の虫垂炎が治療可能になったこと
(2)虫垂炎の程度によっては、抗生物質で治療をして炎症を治めてからの方が手術による合併症の発生や拡大手術になる危険性が低くなること
(3)即時手術で切除した虫垂に癌が見つかることがあること
 特に2 つ目の理由は我々も痛感することで、炎症の極期の手術は虫垂周囲の癒着や虫垂そのものの腫大から、手術が非常に困難であることを感じます。虫垂炎の手術と言いながら、大きな傷になってしまったり、術後しばらくお腹の中にチューブが入っていた方もおられるのではないでしょうか? また3 つ目の理由も見逃すことができません。術前に虫垂炎と診断され、手術によって摘出された虫垂の約1%に癌が見つかると言われています。そうしますと癌のための追加手術が必要になり、再手術ということになります。

 以上の背景から、まずは抗生物質による治療をおすすめしています。そして抗生物質の治療後に、大腸カメラで癌の検索を行った後に待機手術を行います。待機手術で虫垂を切除する必要性については様々な意見がありますが、虫垂炎再発の点や虫垂癌を見逃さないといった点から当院では虫垂切除をご提案します。当院での虫垂切除はお臍を2cm 程度切開して行う腹腔鏡手術です。抗生物質の治療によって炎症や癒着が改善しますと、この腹腔鏡手術が行いやすい状態になります。もちろん患者さんの背景や状態によっては、従来からの即時手術が適当な場合もありますので、十分ご説明させていただいて、柔軟に対応させていただきます。

 虫垂炎はありふれた病気であり、良性疾患でもありますから、できるだけ体に負担の少ない方法で治すことが望まれます。十分な説明のもと、納得していただける治療をご提案させていただきます。

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バイオシミラー

(この記事は2017年7・8月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)



薬剤部 主任 牛嶋 麻紀

 最近「バイオ医薬品」というお薬が多く開発され、これまで治療が困難だった病気の治療に貢献し、注目を集めています。
 バイオ医薬品とは、細胞などを利用して作ったお薬です。バイオ医薬品は高度なバイオ技術を駆使して作られた最先端の医薬品で最新の製造設備と品質管理が必要とされています。そのため、開発や製造などに費用がかかるため、患者さんの医療費負担が高くなってしまうという問題があります。
 そこで、特許切れのバイオ医薬品をほかのメーカーが開発・販売し、医療費の負担を抑える「バイオシミラー」というお薬が誕生しました。


◆バイオシミラーとジェネリック医薬品はどこが違う?

 どちらも「新薬特許が切れた後に発売された医薬品」ですが、バイオ医薬品の場合は「バイオシミラー」、それ以外の場合は「ジェネリック医薬品」と呼びます。

 バイオシミラーは高度なバイオ技術を用いるため、製造工程が多く複雑です。そのため、ジェネリック医薬品より多くの試験やチェックを行うことが必要とされています。このように開発され、承認されたバイオシミラーは、先行バイオ医薬品と品質がほとんど同じで、同じ効果と安全性が確認された薬剤です。臨床試験を含む多くのデータによって、先行バイオ医薬品と同じように使えることが示されています。

 バイオシミラーの薬価は、先に発売された同じ成分のお薬の薬価の原則70%で算定されるというルールがあります。このため先行バイオ医薬品と変わらない治療の選択肢がひろがり、治療の質の向上と患者さんの経済的負担の軽減や医療費の削減に貢献することが期待されています。

西陣病院でも
インスリン グラルギンBS注ミリオペン「リリー」
(ランタス注ソロスターのバイオシミラー)

が採用されました。


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健診のシーズンが来ました。尿潜血陽性と言われたら?

(この記事は2017年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)


尿潜血



  腎臓・泌尿器科 副部長
     乾 恵美




 新年度が始まりました。ゴールデンウィークを過ぎますと、そろそろ健診のシーズンの到来です。皆さん、きちんと受診しておられるでしょうか?

◆尿潜血について
 皆さんは健診で尿検査を受けられたことがあると思います。尿検査を受けていただくポイントは、検査前には激しい運動を控えていただくこと、検査では出始めの尿(初尿)はコップに取らずに捨てた中間尿を採取することです。初尿には尿道や陰部内外からの細菌や混入物が混じることがあるためです。
 さて、その結果で、“尿潜血が陽性ですね”、“尿に血が混じっています”と言われた事はなかったでしょうか?
 ここでは成人の尿潜血についてお話ししたいと思います。これは、尿が作られる通り道、すなわち尿路のどこからかで尿に血液が混じった状態です。尿潜血の陽性率は数% ~ 20%台までと報告によって様々です。また、陽性率は女性に多く、加齢とともに上昇していく傾向にあります。 

◆尿潜血の原因 
 尿潜血が陽性になるのはどういった疾患が原因なのでしょう?腎実質の疾患である腎炎、腎臓~尿道までの尿の通り道にできる尿路結石、膀胱炎などの尿路感染、ナットクラッカー現象などの血管による疾患、やせ型の方に多い遊走腎、男性なら前立腺の疾患、そして注意しておかないといけない悪性腫瘍などが挙げられます。過度の運動や女性ならば月経血の混入、こういったことも原因となります。尿潜血の原因を調べるには、やはり医療機関での精査が必要になってきますので、自覚症状が無くても是非、受診をしていただきたいものです。特に“目に見えて赤いおしっこ”が出たときは、肉眼的血尿といって、まず何らかの病気が見つかることが多いですので、そのままにしておいてはいけません。特に煙草を吸われる方は、膀胱癌など悪性腫瘍の可能性も出てきます。

◆検査について 
 精査は健診結果を持参のうえ、医療機関、特に泌尿器科に受診をお勧めします。検尿を再検した上で、必要に応じて腹部のレントゲン検査、CT、超音波検査、採血検査などを進めていきます。やはり怖いのは悪性腫瘍ですので、尿に“悪い細胞”が混じっていないか調べる尿細胞診や、さらに必要に応じて膀胱鏡検査も行います。 最近では痛みの少ない、柔らかいスコープを用いる医療機関が多く、侵襲の少ないものになってきています。

◆最後に 
 “ 私はいつも健診で尿潜血が陽性だから、体質なんです。だから精査には行っていないです。”とおっしゃる方をしばしばお見かけいたします。
 確かに精査をしても何も見つからない事もよくあります。でも、“いつもの陽性”に隠れて、いつの間にか新たな病気が出現していた、なんて事もあるかもしれません。だから私は“健診で尿潜血を指摘されたら、以前から指摘されていても、また結果を持って受診してくださいね”と、お伝えするようにしています。
 最後に、ビタミンCをたっぷりの食品やサプリメントを摂取した後は、尿潜血が偽陰性を示す事もありますので、検査前日にはお控えくださいね。



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もう一度、「お薬手帳」を 見直そう

(この記事は2017年5・6月号の西陣病院広報誌『西陣病院だより』に掲載したものです)

お薬手帳



  薬剤部 医薬品情報室




◆「お薬手帳」発祥の地は、東大病院
 お薬手帳は、1994年から東大病院外来診療において、薬歴の一元管理を目的に作成した「処方カード」を処方せんに印字し配布したことが始まりです。
「処方カード」を受け取った患者自身が「お薬手帳」を作成していた歴史があります。
 つまり、「処方カード」は現在のお薬手帳に貼付する「シール」の元祖です。 

◆「お薬手帳」は、なぜ必要とされているのか? 
 1993年に別々の病院から抗ウイルス剤と抗がん剤の処方を受け、くすりの相互作用により重篤な副作用が発生し、15人が死亡した「ソリブジン薬害事件」をきっかけとして導入されました。
 また、1995年に発生した阪神淡路大震災では、救護所や避難所に、診療を行うために必要なカルテなどの記録がなかったので、受診を希望する人たちが「お薬手帳」を持っていなかったため服用状況が分からず、糖尿病や高血圧などの慢性疾患に対して継続して行える最低限の医療が出来ない事態が起きました。

◆「お薬手帳」をなぜ持ち歩かないのか?? 
 「お薬手帳」を持っていれば、病院や医院・歯科医院など複数受診したクスリの重複による過剰投与や相互作用による死亡を防ぐことができます。また、東北や熊本など、いつ起こるか分からない自然災害時でも自分が服用しているクスリを継続して処方してもらえます。
 みなさん自身を守ってくれる「お薬手帳」がなぜ?普及しないのか。それは、マスコミによる「お薬手帳をもらえば負担金が増える!拒否しましょう」という偏った情報だけが独り歩きしたからです。

◆シールを受け取るだけでなく、「お薬手帳」を持ち歩きましょう 
 「お薬手帳」は、みなさん自身がクスリを管理し、アレルギーや副作用歴、薬の使用歴を記録するものです。受診時に医師に提示する他、薬局においても薬剤師が確認することで、飲み合わせ(相互作用)や重複投与、他の治療への悪影響の防止といった、薬物治療の適正化に役割を果たしています。

西陣病院の診察室でも「お薬手帳」を医師に手渡してください。




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